2013年 09月 18日
原発賠償京都原告団 共同代表 萩原ゆきみさんの訴え
原発賠償京都原告団・萩原共同代表の訴えです。
弁護士の皆さんを始め、関西在住の皆様。いつも私達の心の支え になり、寄り添って下さり有り難うございます。
失ったからこそ気が付いたのです発事故が起こるまでの間、福島 で家族四人平凡ですが幸せな日々を送っていました。
我が家は築10年ですが、気分は新築同様で、ただそこに居るだけ で、身も心も癒される空間がありました。子供達が生まれて立っ て歩いた思い出深い、とても愛しい家でした。 あと10年住宅ローンを払えば、百年住宅でしたので私の孫・曾孫 の代まで、家賃無しで住めたはずです。
我が家も含め、どれ程の人々が原発事故で、健康・精神・経済的 にどんなに苦しんでいるか、はかり知れません。 しかも、これからもっともっと苦しみは深刻化していきます!
福島集団疎開裁判では「避難させてほしい」という子どもたちの 求めが却下されてしまいましたが、裁判所が認めてくれた事もあ ります。
〇郡山市の子どもは低線量被ばくにより、生命・健康に由々しい事態の進行が懸念される。
〇それを回避するためには、安全な他の地域に避難するしか手段がない。
〇「集団疎開」が危険を回避する1つの教育行政上考慮すべき選択肢である。
それにも関わらず、国が疎開させる必要がないとなってしまった のは私達大人の声がまだ小さかったからです。 国が真実を語ってくれないから声が出せないのです。
国会議員と子供被災者支援法の勉強会では、母親達の悲痛な叫び が上がりました。 原発事故後約2年近くは子供達にマスクをさせる。お弁当を持っ ていかせる。長袖長ズボンを着せる。などして我が子を守るお母 さん達が極少数でしたが、いました。
子供達も、そのお母さん達 の思いを汲んで、他の大多数の子達と違うそれらの事をして自分 の身体を守ってきました。
しかし事故後、2年を過ぎる頃には、それらをしないと将来、恐 ろしい健康被害にあうかもしれないと分かっていても、他の子達 と違う事をして自分の身体を守るという事が、出来なくなってし まいました。 先生も「ちょっとおかしいから、マスクを外しなさい」と簡単に 言ってしまいます。でも、そんな福島の先生を責める事も出来な いと思うのです。先生も、真実を知らないからです。 子供達は、その空気を読み、他の子達と同じ事をする事で、身体 は守れないと分かっていても、心を、精神を守ろうとするんで す。懸命に子供を守ろうとしていた母親達もそんな我が子に「そ れでもあなたは一人で頑張りなさい」と言えなくなってしまいました。
私が原発事故後数回、郡山に帰って感じた事は、役所を含めた地 元の大部分の方々が表面的な報道しか見ていない。「漠然とした 不安を感じながらも、福島でやっていくしかない」と思っている 事です。 ですから、心ある議員さん達と、「真実を知っている私達が真実 を語っていくしかないね」と、決意しました。 しかし、心を許しあっていたはずの地元の人に真実を伝えると、 回を重ねる事に、心の距離が拡がっていくのを感じます。これが、まさしく分断なのだと感じました。 関東を含む被災地の方々に直接言ってもダメなら、そこから遠く 離れている私は、こちらで出来るだけの事をしていきたいと思い ました。 その内の一つが裁判だと思うのです。
〇国民に真実を知らせない事が許せません。
〇「加害者ではない」と言っている事が許せません。
〇被災地に残っている多くの人々にも、避難者の人々にもキチン とした支援をしていない事が許せません。
「安全な所から勝手に避難してきた人」と思われ、どれ程の人々 が悔し涙を流した事でしょう!今回の裁判は、それを覆す裁判で す。 この裁判の意義は、大きく分けると2つあると思います。
①東電と国が被告席に座る事。
②被災者を見捨てずに共に歩んで行く事が全ての国民の未来を守 る事になる。その事を国民の皆さんが知る機会になる事を望みます。
京都では一人あたり550万円の賠償請求をします。原発事故で失っ た物の大きさを考えたら、この金額は微々たるものです。これが 無いと困るのは確かですが・・・・・それと共に、この裁判を通 して、実現したい事があります。 被災地の方々が声を上げられないのなら、遠くの私達が代わりに 裁判という形で声を上げ、被災地の方々が声を上げられるよう に、「避難させて!マスクをさせて!」と言えるような環境作り をしていきたいです。 回り回って被災地に残された人々が少しでも安全に導かれていか れますよう、願わずにはいられません。 原発事故から27年経ったチェルノブイリでは現在の関東と同じく らいの線量の年間1ミリシーベルト以下の所でも、健康被害が出て います。にも関わらず、国は年間20ミリシーベルト以下の所は 帰ってこいと、言うのです。
健康診断ですが、県外避難者はもとより、被災地に残された人々でさえも、一次検査、二次検査共になかなか順番が回ってこない 状況です。通常の甲状腺ガンと違って、化学的放射能によるもの は、例え発見時に小さなのう胞や結節だとしても、見つかった時 には転移している事があると聴いた事があります。関東も含め、 一刻も早い健康診断と治療が求められるのに、国の棄民政策の為、それもままなりません。
一つ、誤解を避けるためにお話しさせて頂きたい事があります。 避難を強いられた自分達と同じく関東も含む被災地で頑張ってお られる方々も国と東電の被害者です。この訴訟を被害者の分断に利用されたくはありません。
広島の原爆で被曝された方が、「裁判は絶対に早くやった方が良い」と言われていました。その方は「裁判を起こしたのが遅くて 後悔している」「証拠はだんだん無くなってくる」と仰っておら れました。
出来るだけ沢山の方々が直ぐにでも裁判をされる事を切望します。
被曝の真実を知っている被曝された方々は、広島、長崎の時と同じように一生、被曝の恐怖に怯えて 暮らさなければならなくなりました。
しかし皆様の心に留めておいて頂きたい事は、今の日本に住んで いる限り、空気や食べ物、建材など、様々な形で大なり小なり、全ての国民が被曝者であるという事です。
今も、放射性物質が飛散し、その事態が収集出来ていないのは事実です。
さらに、その健康被害は世代を越えて受け継がれていくという、本当に恐ろしい性質を持っているのです。私達だけの問題でこの裁判をやっているのではありません。被災者だけの問題ではなく、全ての国民の問題なのです。
どうか、私達を孤立させないで下さい。
西日本にいれば、今はまだ、比較的安全な食べ物を選んで食べる事が出来ます。しかし安全な食べ物を作って下さっている生産者の方々が放射能に気を付けずに食事をされ、病気になる方々が多くなったら、安全な食べ物はドンドン先細りしていきます。
放射能に気を付けずに食事をされている方々が数年、何十年後かに病気になったとしても、その方々はそれが放射能が大きな原因の一つである事にも気が付かないでしょう。
被災地の物を食べて応援と決めた方も、私のように食べないと決めた方も、その結果、被災地がどうなるのか、日本がどうなるのか!に思いを馳せ、日本全体が安全で平和になるよう行動して頂ければ幸いです。
被災地の物を食べる人がいれば、被災地の生産者の方々は作っていいのか、悪いのか悩みながら罪悪感を感じながら作る事もあるでしょう。しかも安く買い叩かれてしまいます。そして被災地では地産地消で大人はモチロン子供達も汚染された食べ物を食べる事を強要されます。食べて応援する事は、本当は避難しなくてはならない程放射能に汚染された被災地に人々を留まらせる事になるのではないでしょうか?
関東を含む被災地がこのままの状態だったら、健康な人が激減するでしょう。
病気の人が増えたら、健康保険料が上がります。介護される人が増えたら、介護保険料も上がります。特定疾病手当てを受ける人も、生活保護を受ける人も、増えるでしょう。
放射能の影響で出生率も更に下がると言われています。
健康で働ける納税者が減ったら、年金、教育費、子ども手当、高齢者手当て等々、思いもよらぬ国民生活のあらゆる所へ皺寄せがいくのです。
被災者だけの問題ではなく、全ての国民の問題なのです。
3.11以前、この国では一般公衆の被曝は年間1ミリシーベルト以下に規制されていました。ところが、今、国は年20ミリシーベルト以下になれば帰ってこいと言っています。
これを許せば、国は今回の対応を前例にして、なし崩し的に国民人一人の権利をないがしろにしていくでしょう。
どうか、私達を孤立させないで下さい。
福島棄民政策というよりも、国民棄民政策なのではないでしょう か?
東京オリンピックが決まりましたが、このままでは日本が世界の信頼を失うのも時間の問題なのではないでしょうか?
裁判と一緒に「健康診断署名」「食品の安全を求める運動」「除染、焼却に伴い、避難地域を解除させない運動」等と一緒にやっ ていく事が非常に大切です。
私達は、これまでも家族を守る為に様々な発信をしてきました。この国の未来の為、世界の為、 色々やってきました。
しかし、私達の力だけでは到底足りません。
私は活動の為、余りにも忙しく普通の生活が出来ません。街を歩くと普通の親子連れを見かけます。私だって、子供たちともっとしっかり 向き合って、お喋りしたり、一緒に遊んだり、お風呂に入ったり、普通に暮らしたいです。
国民の多くが真実を知らないが故に非人道的な事が罷り 通ってしまいます。皆様の身近な所で、被災者のお話し会を開いて下さいますよう、お願い致します。この裁判には多くの大きな意義があります。
国民の皆様お一人、お一人がご自分の問題として捉え裁判の傍聴等で、もっともっと私達の声を聴き、被災者を応援する事で、この国の民を一緒に守って下さい。お願い致します。
2013年9月17日
萩原ゆきみ
by fukushimakyoto
| 2013-09-18 18:00
| 避難する権利と賠償問題