2013年 09月 27日
【週刊MDSから】被災者、避難者を切り捨て 政府基本方針案は撤回しかない!
本日(27日)発行の週刊MDSに「基本方針案」批判の記事をかきました。
うつくしま・・・のブログに転載させていただきました。
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被災者、避難者を切り捨て
政府基本方針案は撤回しかない!
復興庁は8月30日、「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針(案)」(以下、基本方針案)を公表した。9月13日期限でパブリックコメントを募集(後に23日まで延長)し、十分な告知もないまま11日福島市内、13日東京都内で説明会を開催して基本方針案への同意取り付けを画策した。だが、基本方針案撤回を求める被災者、避難移住者の強い批判の前に、「撤回はしないが必要な修正はする」(浜田復興副大臣)と表明せざるを得なくなっている。
◎避難の権利認めた支援法
まず、本来この基本方針案がよって立つべき「原発事故子ども・被災者支援法」(以下、支援法)について振り返っておこう。
支援法は「放射性物質による放射線が人の健康に及ぼす危険について科学的に十分に解明されていない」(第1条)として、「低線量被曝による健康被害」を完全に認めたわけではないものの、「支援対象地域における居住、他の地域への移動及び移動前の地域への帰還」について被災者自らが選択する権利(選択的避難の権利)を認めた。さらに「いずれを選択した場合であっても適切に支援するものでなければならない」(第2条)とし、国は「被災者生活支援等施策を総合的に策定し実施する責務を有する」(第3条)と定めた。
避難の権利を認め国の責務を定めたのは画期的である。
また、国が原発事故による避難移住者に対して行うべき支援として、①移動の支援②移動先での住宅確保③こどもの移動先における学習などの支援④移動先における就業の支援⑤移動先の地方自治体による役務の提供を円滑にするための施策⑥支援対象地域の地方公共団体との関係の維持に関する施策⑦家族と離れて暮らすことになった子どもたちに対する支援⑧定期的な健康診断の実施、健康への影響に関する調査⑨被災者への医療の提供、医療費の減免⑩その他の施策(第9条)を明記したことも重要だ。
◎避難者切り捨て帰還強要
では、公表された基本方針案はどうなっているのか。
第1に、「施策推進の基本的方向性」として悪質なすりかえとごまかしが行われた。
基本方針案は「放射線による健康不安を感じている被災者や、それに伴い生活上の負担が生じている被災者に対し、基本方針に基づく支援により、被災者が安心して生活できるようにする」とする。聞こえはいいが、あくまで「健康被害」は認めず、「健康不安」という気持ち・心の問題にすり替えている。支援法には「一定以上の放射線量が計測される地域に居住していた子どもとそれに準ずるものに対する健康診断は生涯にわたって実施する」(第13条)とされているが、基本方針案には健康診断と医療補償について全く記載がない。
第2は、「支援の対象地域」が著しく狭い範囲に限定され、被災者、避難者の切り捨てと分断を図っていることである。
基本方針案は「原発事故発生後、相当な線量が広がっていた福島県中通り・浜通り(避難指示区域等を除く)を法第8条による『支援対象地域』とする」とした。対象地域は福島県内33市町村のみに限定し、会津地方をはじめ東北や首都圏の放射能汚染地域については含めなかった。支援法第8条は、放射線量が一定の基準以上の地域を支援対象地域とすると規定している。ところが基本方針案は、政府自らが法で定めた基準「公衆の年間被曝限度1ミリシーベルト」すら投げ捨てた。
また、支援法にはない「準支援対象地域」なるものを持ち出し、「より広い地域で施策ごとに支援すべき地域と対象者を定める」とした。どの地域が、どういう施策が対象になるのかも、いっさい明らかにされていない。
すでに福島県民に放射能汚染による小児甲状腺がんをはじめ健康被害が多発しているにもかかわらず、支援対象地域を恣意的に狭く設定した。それは、県内外にさらなる分断を持ち込むもので、決して認めることはできない。
第3は、施策の基本的事項の根本的な不備である。施策のほとんどは、支援法実施先送りのための「避難者支援施策パッケージ(3月15日発表)」で出されたものだ。それ以外は「福島近隣県を含めた外部被ばく状況の把握、自然体験活動、民間団体を活用した被災者支援施策といった施策の拡充・検討予定」とお粗末きわまりない。
支援の具体的内容は帰還促進に特化したものとなっている。支援法では避難移住者に対する施策を国の責任で実施することになっているが、基本方針案では完全に無視されている。避難を余儀なくされた人たちを切り捨てる棄民方針なのである。
◎撤回し作り直せ
基本方針案は、支援法に定める支援対象地域の考え方を否定して恣意的に狭く設定し、放射線被曝による健康被害を認めず、避難移住者の要求を切り捨てるものである。施策も帰還を促進する支援が中心であり、評価することはできない。国連「健康に対する権利」特別報告者アナンド・クローバー報告(5月23日)を完全に無視したばかりか、支援法そのものにも違反する。
こんなでたらめな基本方針案は撤回しかない。
とはいえ、支援法成立以降、実施を一貫してサボタージュしてきた復興庁がこの時期に基本方針案を出さざるを得なくなった。それは、被災者、避難移住者が全国で声を上げ、院内集会、避難者による公聴会の開催、裁判闘争、地方議会での意見書採択など、粘り強い闘いに政府側が押し込まれていることを意味する。
基本方針案を撤回させ、健康診断、医療・生活補償など被災者、避難者の要求を盛り込んだものへと一から作り直させるため、政府・復興庁に譲れない要求をぶつけよう。
by fukushimakyoto
| 2013-09-27 18:00
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