2015年 05月 21日
福島県への抗議文
福島県の幹部の方々へ
抗 議 文
私は、京都で原発避難者の支援をしている者です。
5月17日の朝日新聞朝刊に「自主避難 住宅提供終了へ」という見出しの記事が載りました。中身を見ると、「国の避難指示を受けて避難した人には引き続き無償提供を検討する」一方、「自主避難者についてはその後は延長しない考え」と報じられています。被災市町村の一部が「無償提供を続ける限り、帰還が進まない」と要望しているのを受ける形で、福島県幹部も「避難生活が長期化することで、復興の遅れにつながりかねない」と考えていることがその根拠であるように報じられています。
まず、こんな人権を無視した方針を考えている県幹部のみなさんに抗議の意を表明します。
セシウム137の半減期は30年で、いくら「除染」したところで、放射性物質は別の場所に移動しているだけで、簡単に放射線量が下がるわけがないことは自明です。政府・福島県は20ミリシーベルト/年を基準に、それ以下の区域への帰還を進め、自民党に至っては50ミリシーベルト以下の区域への帰還を進めようとしています。チェルノブイリ原発事故で被災したウクライナやベラルーシではなんと0.5ミリシーベルト以上の区域は放射線管理強化区域に指定され、さまざまな保障が与えられ、1ミリシーベルト以上~5ミリシーベルト未満の区域は移住の権利が与えられています。
いったい日本人は東欧の人たちにくらべて放射能に強いという根拠でもあるのですか?経済力の弱い東欧の国が国民の健康と安全に配慮して決めた基準すら守れない日本という国はなんという国ですか!日野行介さんの『福島原発事故 被災者支援政策の欺瞞』によると、日本政府は2012年2~3月にチェルノブイリ現地調査を実施し、チェルノブイリ法についても調べています。ところが、調査団はチェルノブイリ法について「政治的背景に基づくもので、過度に厳しいもの」との評価をくだし、調査したことすら公表しませんでした。結局、同じことをやれば、膨大な予算が必要になるということで、あえて無視したのでしょう。
帰還政策を進めているあなた方、県幹部は、原発事故から28年も経ったいま、ウクライナやベラルーシで健康な子どもがほとんどいない地域があるということを知っていますか?それも決して放射線量が高い地域ではなく、浜通りよりも低く中通りと変わらないような地域でそうなのです。そのことは、馬場朝子さんや白石草さんのルポルタージュで、誰でも知ることができる現実です。問題なのは、それらの国では長期保養を国家的事業として取り組み、甲状腺がんに限らず全面的な健康診断を実施しているにも拘わらず、そういう状況になっているという点です。福島県の事故当時18歳未満だった子どもだけの、甲状腺だけの健診しかない日本の子どもたちが10年後、20年後どうなっているかは、考えるだけでも恐ろしいです。
あなた方がいくら帰還政策を進めようとも、自分で放射能について調べ日々知識を増やしている人は単には帰還しません。そういう人たちに対する政策を打ち切るというのは、政府や県の意向に従わない人への懲罰であり、福島県に残っている人への懐柔策に他なりません。「避難生活が長期化することで、復興の遅れにつながりかねない」(県幹部)とはいったいなんですか!避難者が福島県に戻って来ることが復興なんですか?被災者の健康や生活を無視して、県民人口を元に戻すことにどんな意味があるのですか。そんなことが「復興」なんですか?
そもそも区域外から県外に避難している人たちも、原発事故さえなかったら福島で普通に生活をしていた人たちばかりであり、避難している人にはなんの責任もありません。悪いのは事故を引き起こした東電であり、きちんと規制をしなかった国です。福島に帰っても住む家がない人はたくさんいます。いまの公営住宅や借りあげ住宅を追い出され、家賃負担に耐えられない人たちはどうすればいいのですか?あなた方のやり口は本当に卑劣で非人道的です。
こんな政策を黙って受け入れるわけにはいきません。私たち支援者は、避難者に方々と手を取り合い、あらゆる手段を駆使して、この卑劣な政策を撤回させ、無償提供の長期延長をかちとるつもりです。恥を知りなさい!
●●●●(京都府宇治市在住)
by fukushimakyoto
| 2015-05-21 08:05
| 避難用住宅問題